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バブル警戒警報 ~ バブルとの上手な付き合い方 ~

市場が浮かれ気味である。トランプ相場といわれるが、その根拠はどうだろう。次期大統領の発言内容は重大事だが、期待先行の感が強い。

局地的バブル

私自身(実験ファンド)が保有している銘柄の株価と、それぞれの会社の1株当たり価値試算額とを比べて見ているのだが、複数の会社が過大評価の状態となっている。価値評価は保守的に行っているのだが、それを割り引いても乖離幅が大きい。局地的なバブルが生じていると考えてよさそうだ。警戒すべき状況といえる。こういう事は前にもあった。その後、株価は唐突に下落した。

難しいのは売り時である。本当に良い会社であれば、長期にわたって価値を生み出し続けてくれるので、短期的に過大評価されているからといって、それを理由に売却してしまうことが、結果として利益を得る機会を手放すことになりかねない。
過去、売り急いでしまい、結果的に得られたはずのリターンをみすみす逃してしまったという苦い経験が私にもある。

いつ売るべきなのか

売るべきかどうかは、その人が想定する投資期間によって変わってくる。
また、市場価格の上下のタイミングを正確につかむ事はまず不可能である。しかも売買の都度コストがかかるのだから、着実に元本が削り取られる。
経営者が変わったり、会社を取り巻く環境が変わったり、こちらが想定していたシナリオ、ストーリーと異なる展開がこの先見えてしまったような場合には、売ることを考えなければならない。
ただそのタイミングが問題である。バブルが大いに膨らんで誰がどう見ても高い、高すぎるというようなタイミングで売り抜けられるのが、理想ではある。
しかし市場の動きはカオスである。予測がつかない。いったいどの時点が株価のピークなのかなんてことは、後になってみないとわからない。

投資先候補の会社リストをつくっているのだが、これと同じく、売却候補の会社リストも用意しておくべきなのだ。自身の長期投資の基準から外れそうな会社のリストである。自身の基準に適合しなくなったことが明らかな会社は即売却である。売り時を逸することによって被ってしまう損失は大きい。金銭的にも、時間的にも。

バブル発生時に現れる好機

バブルが膨らんだときは、売り時を待ち構える投資家にとっての好機といえる。バブルの膨張はチャンスでもあるのだ。逆に、絶望に市場全体が沈んでいるときは、投資を行う好機である。

売りも買いも、問題はそれを行うタイミングであるが、ベストなタイミングを正確に予測することは無理である。株価のピークや株価の底を事前に予測することは不可能という前提で考えたほうが良い。わからないということを知っておくことが大事である。

最善なのは、市場という他者の評価ではなく、自身の評価基準に従うことだ。

ただ、周囲を観察することでヒントが得られる場合もある。猫も杓子も、今は株である、投資しないやつはおかしいなどという発言を耳にするくらいのときがわかりやすい。バブルのピークが近い。
逆に、もう株式は死んだ、株式投資なんてばかのやることだなどと、誰も彼もが言うようになっている時、それは投資を始める好機である可能性が高い。

賢明な助言と皮肉な結果

こういう時期、メディアは当てにならない。当てになるのは個人のみである。熱狂の中、冷静にバブルの可能性を指摘し、根拠なき熱狂と警告した人がいた。
当時のFRB議長グリーンスパン氏が警告を発したのは1996年12月5日、今からちょうど20年前のことである。
熱狂の中、あるいは絶望の中、それをあおることは誰にでもできる。狂騒の中、大多数と逆の意見を公に発することのできる人物はまれである。こういう人のことを賢人と呼ぶのだろう。

ところで、グリーンスパン氏の警告を素直に受け止めて、その時点で持ち株を売却した人はどうなったか。結論からいえば損してしまったのだ。
根拠なき熱狂という警告が発せられた1996年12月5日、ダウ平均は6,437ドルをつけていた。
その後、バブルは膨張をつづけ、1999年12月にダウ平均は11,659ドルをつけた。そしてその直後、バブルは弾けた。

株価は暴落し、2002年10月にダウ平均は7,286ドルまで下げた。確かに大暴落ではあった。しかし、「根拠なき熱狂」発言時点の株価を下回ることはなかった。

次は、サブプライムローン絡みの米住宅バブルであるが、ピークは2007年10月の14,280ドルである。その後の暴落でダウ平均は6,440ドルまで下げた(2009年3月)。偶然、警告が発せられた時の株価にほぼ等しい。しかしいってみれば、そこまでの下落で済んだのだ。そして2016年11月、ダウ平均は19,000ドルを超えた。

賢明なるグリーンスパン氏のバブル警告を素直に受け止めて売却した人は、持ち続けていれば得られたはずの値上がり益を失う結果となった。

バブル崩壊の衝撃を吸収する複利の力

グリーンスパン氏が警告を発したときは、バブルだったのかもしれない。しかし、米国上場企業の平均的なROEは9%を上回る水準にあり、NYダウを構成する企業のROE平均は18%を超える(三井住友トラスト・アセットマネジメント調べ 2015.3)。
仮に年率9%で複利運用できるとしたら、8年間で元本は倍になる。20年後には5.6倍になるのだ。バブルはたしかに破裂したが、企業群が生み出した利益は、バブル崩壊の衝撃を吸収して余りあるものだった。

過去と未来は別物だが、人の本質は変わらない。これからもバブルは繰り返し生まれ、崩壊するのだろう。バブルの膨張と破裂は定例行事のようなものである。

市場は常にバブルとともにある。バブルとその周辺事情を理解しておくことで、バブルと上手に付き合っていくことができるはずだ。