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コロナウイルスが露わにした中国の本質

新型コロナウイルスの感染拡大は専制独裁体制の危うさを明らかにした。大国であるほど周辺国への影響が大きい。

不測の事態に対しての対応の遅れが顕著である。情報伝達の効率性が損なわれている。独裁者個人の実務能力にも限界がある。

共産党の支配する中国は信用を大いに損なった。今後、中国が覇権を握ることはないだろう。

専制体制とは平時には強さを見せるが非常時には脆さを露呈する。専制独裁体制は本質的に脆く、長命は望めないのだ。

21世紀は中国の時代とジム・ロジャーズは語ったがそれは誤りだった。

「会計上の費用」は無視して良いものなのか?

これはあくまでも会計上の費用であってキャッシュの流出を伴わないものである。こんな表現が最近目につく。

この言葉の裏には、資金の流出を伴わないものだから、単に会計上の費用に過ぎないから株主その他の利害関係者はこのような費用を気にするべきでないというようなニュアンスがある。そんな決算開示の姿勢が増えている。

特に企業買収などに絡んで費用が増加した局面でいわれることが多い。

企業買収に絡んでのPPA(パーチェス プライス アロケーション/取得原価配分)によって認識された無形資産があって、その償却費が生じたりする。償却費はたしかにキャッシュの流出が伴わない類の費用である。だから心配することはないというような論調がメディアでも用いられていたりする。おかしな話である。

会計上の費用とは価値の流出が起きているぞという事実を表現するためのものである。PPAによって認識された無形資産とは買収対価の支払いによって認識されたものであって、その償却費についていうならば、キャッシュが伴わないのではなく、キャッシュその他の価値の流出が既に起きた結果として計上された費用である。すでに株主の負担のもとに価値は流出しているのだ。

それらの費用はあくまでも会計上の費用であってキャッシュが伴わないから株主はこの費用を気にすべきでないというような決算説明を行う経営者が最近目につくようになってきて、何という堕落した経営者かとひとり憤りを感じている。そしてそういう経営者の率いる会社には絶対に近づかないようにしている。

 

投資の成否を決めるものについて

世の中には私と似たようなことをやっている人がいるようで、個人投資家に対して、有望な会社を見出して、割安な価格で買い、長期間投資し続ければ、結果的にうまくいきますよと、そんなことを伝えている方がいる、という話を聞いた。YouTuberだそうだ。私自身は彼のYouTubeを見たことがないのだけれども、それは良い活動であろうと思う。私と志を同じくするような方であろうと思う。

最近、炎上しているとも聞いた。どうやらその方が買い推奨した会社の株価が大幅に下がって、どうしてくれるんだというクレームが入ったらしい。そこで彼は、待っていればそのうち上がるから気にするなと回答したのだそうだ。それが火に油を注ぐ結果になったのだという。

10年くらい持ち続けていれば、やがて戻るだろうから気にするなと。もっともな話だと思うのだが、いわれた人は納得できなかったらしい。

私自身、実験ファンドを運用し続けてみてわかったのは、やはり長期と言うのは1年や2年、5年どころではなく、やはり少なくとも10年は見る必要があるということである。実験ファンドが投資していて大幅な値上がりを見せた株式がいくつかあるのだが、そういった会社の株価が目に見えて大幅な上昇を見せたのは、初めて取得してから10年近く経ってから、あるいは10年を超えてからのことだった。

しかし、10年待てる人というのは、どうやらそう多くはないらしい。10年も待てるものかという人と、10年待つのは当然のことと考える人が、どうやら世の中には両者いるらしい。同じ投資家といっても種類が異なるといえる。

投資で結果的にうまくいくかどうかというのは、知識の多寡、技術の有無などは実は大して重要でなく、それよりも投資家個人としての気質による部分が大きいといえるかもしれない。

 

※この記事は大部分を音声入力で書いた。

ヤマトホールディングスのこと

アップル社のAirPods Pro を買った。投資には直接関係ないので詳細はnoteに -> https://note.com/notenote55/n/n1703982d6a38

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AirPods Proはヤマト運輸のアベさんが届けてくれた。ここ数年間、我が家の近辺は彼が担当してくれているが、感じの良い方でいつも感心する。実際、彼から荷物を受け取るだけで気分が良くなるのだ。すごいことだ。極めて水準の高いプロフェッショナルであろうと思う。プロとはかくあるべきなのだといつも学ばせられる思いでいる。ヤマトの担当者さんは歴代いつもそんな感じである。

他の宅配業者さんと比べてみるとヤマト運輸のレベルの高さが際立つ。近年、ネット通販の物流量が急増した結果、運送業は需要過多の状態に陥り、新規参入業者も増えたが、その質的水準は驚くほどに低いものとなった。特にアマゾンがひどい。デリバリープロバイダさんの水準の低さは目に余るものがあった。アマゾンは個人的に大好きなのだが、今は配達員の人と顔を合わせることのないようにすべて置き配指定としている。

見方を変えれば、アマゾンは配送業務に係る革命的な手法を実行に移したという点で評価されて良いのかもしれない。ただしそれはヤマト運輸が手がける配送事業とは異質のものという他ない。人を幸せにするのがビジネスにおいて最も大きな価値を与える行為であるとすれば、やはりヤマトのその能力は頭抜けている。
ちなみにヤマトホールディングスの株価はこのところ大きく下げているので注目している。

アマゾンとの取引を大幅に縮小、配送料金を値上げしてから、売り上げが減少し損益が悪化したことが主な原因だろうか?チャートを見れば株価が大幅に下落しているように見える。

直近5年間を見れば株価は最安値に近い水準にある。そこで有価証券報告書をダウンロードして眺めてみた。

ROEは高い水準にあるとはいえない。自己資本比率は低くはないが高いともいえない。キャッシュ・フローは健全であり、昨今大幅な改善が見える。

1株当たり利益と1株当たり純資産の水準、諸々の数字から考えてみれば、現在の株価はなるほど妥当なものといえそうだ。高いわけではないが安いわけでもない。

ただしヤマトの収益稼得能力を考えれば、もしかしたら買いかもしれない。

近い将来何らかのネガティブな要因があって、さらに株価が下落するようなことがあれば良い投資となる可能性もある。有望投資銘柄候補に加えておく。

株主と利害関係の一致した経営者を選ぶ(投資実験報告2019 その8)

この年末年始はゴーン スキャンダル一色だった。

会社を私物化し、株主の資産を喰いものにする経営者について考える良い機会でもあった。

注目すべき情報その④:役員の状況・大株主の状況

立派な経営者もいる一方で劣悪な経営者もいる。

株主の立場に立って経営判断を行う、株主利益の最大化を図る経営者にこそ資金を託したい。しかし他人の心のなかは読めない。どうするか?

内心が読めないのなら、外見から判断するしかないだろう。株主の立場で会社に深くコミットしている経営者が良い。

そこでマニー社への投資を検討しているときに見たのは有価証券報告書、役員の状況のパートである。経営者がどれだけ株式を所有しているかを把握した。

<役員の状況> マニー社 2007.8 有価証券報告書より

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取締役上位3者(=執行役上位3者)合わせて持株割合は26%強、さらに大株主の状況も見た。すると創業者・現経営者一族の持株割合の高いことが読めた。

<大株主の状況より抜粋> マニー社 2007.8 有報より 

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松谷姓の大株主、またマニックス社も彼らが深く関与する会社と推測(住所が同じ)。MANI社員持株会もまた存在感のある大株主。これら経営に深くコミットしているとみなせる大株主の人々の持分を合わせれば44%強に至る。

経営者自身に加え持株会を通じた従業員の人々もまた、株主の立場で考え行動してくれることを期待しても良さそうに見えた。

自己資本比率から考える投資の意思決定(投資実験報告2019 その7)

自己資本比率の高い会社には安心感がある。借金はすべきかすべきでないか、両論あろうが、私であれば無借金経営が好ましいと考える。

自己資本比率を鵜呑みにしない

自己資本比率は調べればすぐに出てくる数値だが、その裏付けとなる資産の内容も大事でこれを見ずに、ああ何%ね、と安心することはできない。貸借対照表を吟味する。

マニーを調べ始めた当時の有報を見れば、特に懸念を覚えることもないまっとうな感じの資産構成であった。

ひとつ気になったのが「のれん」の存在である。0.25億円ののれんが資産の一項目としてある。

<マニー社の「のれん」> ※2007.8期 連結貸借対照表より

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注目すべき情報その③:のれん

のれんは通常、合併や買収、事業の譲受などに起因して生じる。

そもそも「のれん」とはいったい何なのか?

超過収益力であると会計の教科書では説明されるのが普通だが、そうとでもとらえなければ説明のつかない、その実あやふやな正体不明のものという側面がのれんにはある。

いじわるな言い方になるかもしれないが、経営者の思い込みで高値づかみした金額という性質のものも少なくない。そういうのれんはある程度の期間、資産として扱われるが早晩、のれんの減損損失という形で表面化し、損益を悪化させ、資産項目から消え去ることになる。

マニー社の場合、純資産134億円に対して0.2%弱と小さな割合であるので最悪、全額減損となったところで大勢に影響はないだろうと考えた。

<マニー社の自己資本> ※2007.8期 連結貸借対照表より

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のれんはないものと考えるスタイル

のれんの実態はあやふやなものと(個人的には)考えるため、また投資の意思決定は損失の回避を最優先事項とするため、投資の意思決定に際して、のれんはないものとして考えるようにしている。のれんが全額減損となったとしたら自己資本比率はどうなるだろうと考えるのだ(当然、自己資本比率は低下する)。

それでもなお魅力を減じない会社にのみ、実験ファンドは投資して来た。これが正しいやり方というつもりはない。ひとつのスタイルである。

莫大なのれんを抱える会社と投資家が直面するリスク

懸念を覚えるのは巨額ののれんを抱える会社である。

昨今、野放図な買収を繰り返し、その結果、巨額ののれんを抱える会社が増えて来た。

極端に低い金利とのれんの規則償却を禁止するIFRS米国会計基準がもたらした弊害であろうととらえている。

当初の思惑が外れて買収した事業が想定通りの結果を生まなかった、高過ぎる買収だったとみなされてのれんの減損が強いられたときどうするのか。どうしようもないのだが。自己資本を食い尽くし債務超過に陥る危険性を考えたりしないのか。

近い将来、巨額ののれんの減損損失が、連鎖倒産などを通じて大きな問題となる可能性は低くないと考えている。もしそんなことになれば、それを契機にのれんの規則償却がIFRS米国会計基準においても復活するかもしれない。

さて、次に示すのは直近の決算で巨額ののれんを計上したある会社の連結貸借対照表IFRS適用会社なので連結財政状態計算書だが実質同じもの)である。

<巨額ののれんを抱える某社の連結財政状態計算書>

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*ほぼ自己資本に匹敵するのれんを抱える会社を、投資家諸氏はどうとらえるのか?私は近づきたくない。

実はこの某社、実験ファンドが保有していた会社なのだが経営者の既存株主の利益を蔑ろにする姿勢と行動に驚き呆れ、2019年初頭に全株売却処分とした。

(付記)自己資本と純資産はちょっとちがう

ところで、自己資本と純資産は似ているがちょっと異なる概念である。純資産から非支配株主持分と新株予約権を除外したものが自己資本となる。まぎらわしい。

ちなみにマニー社の場合はいずれも純資産に含まれていないので、純資産イコール自己資本である。

 

1株当たり純利益を読む法(投資実験報告2019 その6)

株式投資で儲けるには(あえて生々しい表現で書く)安く買うことが大切だ。高値づかみをするなど論外である。

いきなり話はそれるが、企業買収が経営者の仕事だと勘違いしているCEOはけっこういるようで、そういう輩は慣れない買収交渉で、交渉相手から何度も値を吊り上げられ、それを丸呑みにしていたりする。そしてそんなどうしようもない経営者を取締役会はさっぱり取り締まれていなくてと、はたから見ても散々な会社があった。

さらに笑えないことに実験ファンドはそんな会社の株主であったりしたので、そういうどうしようもない会社には見切りをつけて、2019年の初めに全て処分した。もっと早い段階で売り払うべきであった。今でも思い返すたびに腹立たしく思う。

それはともかく、安く買うにはその株の価値がどれくらいなのかある程度目星をつけておく必要がある。

正確な価値評価は無理である。大雑把にやるしかない。そうする他ないのだがこれがとても大切であろうと思う。大きく誤らないためにである。

そこでとても重要になってくる情報が、1株当たり当期純利益だ。

注目すべき情報その②:1株当たり当期純利益、あるいは潜在株式調整後1株当たり当期純利益

その会社の長期的な利益水準が知りたい。

純利益は、その会社がどの程度の価値を毎年生み出していけるのか推測できるような指標であって欲しい。

近年、当期純利益の概念が変更された(日本の会計基準)。IFRS国際財務報告基準)とのコンバージェンスの一環である。2015年4月以降に始まる年度から、当期純利益は非支配株主に帰属する分を含んだものになった(ちょっと前までの少数株主損益のことである)。

気軽に変更して良い概念ではないと思うのだが、IFRSの存在を無視できないようなのでやむをえまい。できればIFRSなど完全無視してしまえば良いと個人的には思っているのだが、私はその点影響力を持っていないのでしようがない。

ただ、1株当たり当期純利益は非支配株主に帰属する損益控除後の損益ベースで計算されるのでこちらの性質は従前と変わらない。

さらに、ちょっと前から、米国会計基準を適用する会社は保有する有価証券の時価変動を純損益に含めることを強制されるようになった。これまたまぎらわしい。2017年12月15日以降開始の年度からそうなった。

ちなみにバフェット氏は、この基準変更に際して純損益が「使えない("useless")」ものになったと批判している。

そんな基準変更をどこの誰が求めているのか?ただのノイズではないかと首を傾げたくなる場面が近年少なくない。

日本の会計基準IFRSや米国基準に比して遜色がないどころか最も常識的な基準であると思う。それでも基準を適用する企業数、アクセスできる資本市場の規模の差から、どうしても品質の劣るIFRSに引っ張られてしまうのだろうか。これまた腹立たしくもある。

そういうところも一応頭に入れて、1株当たり純利益の水準を見極めるのである。

ところで、「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」が併記されている会社は、希薄化効果の顕在化している潜在株式が存在することを示しているので、この場合はただの1株当たり当期純利益は無視して、潜在株式調整後のものを実質的な1株当たり純利益とみなして考える。

ただし、株価水準が変動すれば希薄化効果の有り無し、その影響度は変わってくるのでその点、要注意ではある。

付け加えていえば、1株当たり当期純利益と潜在株式調整後のそれとの差が大きな会社の場合、潜在株式(たいていストック オプション)を無節操に発行していることもあるのでちょっとしたネガティブ サインととらえて投資の実行には慎重にならざるを得ない。

このようにして会社の1株当たりの価値創出能力を大雑把ながらも見極めようと努力しつつ、それを現在価値に割り引く。割引率はその会社の利益創出能力の成長率と不確実性とを考えつつ、微調整を加える。

割引率をどうするかは機械的にできることではないので主観のもとずばっと行う他ない。高値づかみを避けることが最優先事項なので、やや保守的に(割引率はどちらかといえば高めに)見積もってやってきたわけだが、結果を見ればそれが良かったのだろうと思っている。