- 日本の証券市場は複数の会計基準を認めている。
- どの会計基準を用いるかで、会社の価値に影響を与えるはずがない、と考えるのは正しいのだろうか。
- 実験ファンドが投資する会社について、適用している会計基準という切り口で少々、考えてみた(※2016年度末時点の状況は下表のとおりである)。
- 高い運用利回りをもたらしてくれた会社(複利利回り8%以上の会社)はすべて、日本基準を適用している会社であった。
(会計基準に日本基準を適用している実験ファンドの投資先)
(IFRSを適用している投資先)
- IFRSを適用する会社のうち一社は、当初は日本基準だったのだが投資後7年目にIFRSの適用を始めた。買収を重ねて「のれん」の残高が膨らんだ後に行われたIFRS適用であった。その意図はのれんの定期償却負担の回避であろうと推測できた。明らかにネガティブなサインである。
- 経営者の誠実性が感じられない行為であった。こういうときは、たとえ将来性が見込めるビジネスを持っていたとしても、ある程度、投資のウェイトを縮小すべきである。サインを感じ取ったそのとき、即座にそうすべきであったのだ(これができていないことが反省点である)。
- 昨今、新たにIFRSの適用を表明する会社は十中八九、多額ののれんを抱えているように思われる。
- IFRSは会計基準として未熟である。それどころか、基準の改正にコメントを求めておきながら、多数意見をあっさり無視した改正案を通したり(IFRS9)、コメントを求めることなく時価評価の一部凍結をバックデートで認めたり(2008年10月)と、IFRSファウンデーションは奔放である。彼らの親の顔が見たい。
- そういう経緯があるものだから、IFRS!ははぁ国際財務報告基準ですか!すばらしい!とか思うわけもなく、逆に、眉に唾つけてじっくり見極めねばという気持ちになってしまう。狸かもしれない(実際、狸が多い)。
- これからIFRSを適用します、というような会社が視野に入ったときは、まずのれんをチェックするようにしている。そしてたいてい巨額ののれん残高が見つかる。
- IFRS適用企業に対する懸念あるいは不信感を、多くの市場参加者が持っているものと考えて間違いないだろう。
- ついでながら、7年以上投資継続先13社のうち、US基準適用会社は4社である。これらの運用利回りは年率5%前後といったところである(ぱっとしない)。
(米国(US)基準を適用している投資先)