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のれんの膨張と利益の歪みについて

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  • 近年、のれん残高が身の丈に比して巨額に過ぎるように見受けられる会社が増えた。自己資本を超える規模ののれんを抱える会社が珍しくない状況になっている。
  • のれんの規則償却が禁止されているIFRS国際財務報告基準)の影響が大きい。
  • IFRSは米国基準に沿う形でのれんの償却を禁止することにしたわけだが、米国基準でも2001年(同年公表の公開草案)まではのれんの規則償却が求められていたのだ。のれんの償却が禁じられたのはふるい話ではない。
  • のれんを償却しないという処理は会計理論的にも説明がつかない。結果的に自己創設のれんの計上を認めることになるからだ。会計の基本ルールを逸脱したルールが大手を振ってまかり通っている近年の状況こそ、後年、興味深い研究対象になり得ると思われる。
  • ここから、IASB(IFRS)やFASB(米国)といった会計基準設定主体は会計の専門家集団などではなくあくまでも政治的な色彩の濃い存在なのだということがわかる。さらにいえば投資家利益の保護などというお題目は建前に過ぎないのだということも見えてくる。
  • IFRSや米国基準を適用する会社の利益は、のれん償却費負担の回避でかさ上げされる結果となる。このように決算数値の歪みが顕著になってきているのが昨今の企業情報開示体制である。利益が減らないのだから巨額ののれんの計上に怖れを抱かない経営者が増えているように思える点、いち投資家として恐怖感を覚える(最近では武田薬品工業のCEOウェバー氏の顔が思い浮かぶ。武田薬品は同氏のCEO就任直前にIFRS適用を決めている。こわい話である)。
  • ところで、日本基準はのれんの規則償却を強制している。この点、日本の会計基準設定主体(ASBJ)は骨がある。日本人として誇って良い。