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1株当たり純利益を読む法(投資実験報告2019 その6)

株式投資で儲けるには(あえて生々しい表現で書く)安く買うことが大切だ。高値づかみをするなど論外である。

いきなり話はそれるが、企業買収が経営者の仕事だと勘違いしているCEOはけっこういるようで、そういう輩は慣れない買収交渉で、交渉相手から何度も値を吊り上げられ、それを丸呑みにしていたりする。そしてそんなどうしようもない経営者を取締役会はさっぱり取り締まれていなくてと、はたから見ても散々な会社があった。

さらに笑えないことに実験ファンドはそんな会社の株主であったりしたので、そういうどうしようもない会社には見切りをつけて、2019年の初めに全て処分した。もっと早い段階で売り払うべきであった。今でも思い返すたびに腹立たしく思う。

それはともかく、安く買うにはその株の価値がどれくらいなのかある程度目星をつけておく必要がある。

正確な価値評価は無理である。大雑把にやるしかない。そうする他ないのだがこれがとても大切であろうと思う。大きく誤らないためにである。

そこでとても重要になってくる情報が、1株当たり当期純利益だ。

注目すべき情報その②:1株当たり当期純利益、あるいは潜在株式調整後1株当たり当期純利益

その会社の長期的な利益水準が知りたい。

純利益は、その会社がどの程度の価値を毎年生み出していけるのか推測できるような指標であって欲しい。

近年、当期純利益の概念が変更された(日本の会計基準)。IFRS国際財務報告基準)とのコンバージェンスの一環である。2015年4月以降に始まる年度から、当期純利益は非支配株主に帰属する分を含んだものになった(ちょっと前までの少数株主損益のことである)。

気軽に変更して良い概念ではないと思うのだが、IFRSの存在を無視できないようなのでやむをえまい。できればIFRSなど完全無視してしまえば良いと個人的には思っているのだが、私はその点影響力を持っていないのでしようがない。

ただ、1株当たり当期純利益は非支配株主に帰属する損益控除後の損益ベースで計算されるのでこちらの性質は従前と変わらない。

さらに、ちょっと前から、米国会計基準を適用する会社は保有する有価証券の時価変動を純損益に含めることを強制されるようになった。これまたまぎらわしい。2017年12月15日以降開始の年度からそうなった。

ちなみにバフェット氏は、この基準変更に際して純損益が「使えない("useless")」ものになったと批判している。

そんな基準変更をどこの誰が求めているのか?ただのノイズではないかと首を傾げたくなる場面が近年少なくない。

日本の会計基準IFRSや米国基準に比して遜色がないどころか最も常識的な基準であると思う。それでも基準を適用する企業数、アクセスできる資本市場の規模の差から、どうしても品質の劣るIFRSに引っ張られてしまうのだろうか。これまた腹立たしくもある。

そういうところも一応頭に入れて、1株当たり純利益の水準を見極めるのである。

ところで、「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」が併記されている会社は、希薄化効果の顕在化している潜在株式が存在することを示しているので、この場合はただの1株当たり当期純利益は無視して、潜在株式調整後のものを実質的な1株当たり純利益とみなして考える。

ただし、株価水準が変動すれば希薄化効果の有り無し、その影響度は変わってくるのでその点、要注意ではある。

付け加えていえば、1株当たり当期純利益と潜在株式調整後のそれとの差が大きな会社の場合、潜在株式(たいていストック オプション)を無節操に発行していることもあるのでちょっとしたネガティブ サインととらえて投資の実行には慎重にならざるを得ない。

このようにして会社の1株当たりの価値創出能力を大雑把ながらも見極めようと努力しつつ、それを現在価値に割り引く。割引率はその会社の利益創出能力の成長率と不確実性とを考えつつ、微調整を加える。

割引率をどうするかは機械的にできることではないので主観のもとずばっと行う他ない。高値づかみを避けることが最優先事項なので、やや保守的に(割引率はどちらかといえば高めに)見積もってやってきたわけだが、結果を見ればそれが良かったのだろうと思っている。