SPAC上場について、その本質を考える
ご質問をいただきました。落ち着いてご回答したいと思っていたのですが、師走のこの時期、妙にあわただしい状況にありますことから、取り急ぎ、私の考えを記しておきます。落ち着いた頃に、ラジオでも取り上げたいと思います。
トランプさんの新SNSでニュースになっていますSPACについて質問があります。
果たして経営基盤も実績もないスタートアップ企業がいきなり上場出来るというのはどうなんでしょうか?
仕組み的に内輪だけの金儲けの手段になったりしないのでしょうか?(メリットもあると思いますが...)
庄司さんから見てSPACのメリットとデメリット、そして庄司さん自身はSPACについてどう思われるのか?
興味がありましたら、またラジオで話してくれると嬉しいです!(naoさん)
ラジオを聴いてくださっているのですね。ありがとうございます。
以下に、思うところを記しておきます。
<SPACについて>
- 特別買収目的会社 (Special Purpose Acquisition Company) のこと。スパックと読む。
- 海の向こうで、SPACブームが起きていた。今年2021年の米国IPOによる資金調達額の過半が、SPAC上場によるものだそうだ。ただ、最近はブームも沈静化する方向へ向かっているようではある。
- Digital World Acquisition Corp. (以下、”DWA社”) という上場SPACがある(Nasdaq上場)。
- このSPAC、トランプ前大統領が設立したメディア会社(TRUTH Socialを運営する)Trump Media and Technology Group社との合併を計画していると報じられた。
- ただ、合併の合意がなされたタイミングが規制に反している可能性があるということで、SEC(米国証券取引委員会)とFINRA (自主規制団体としての民間会社。Financial Industry Regulatory Authority) から、質問状が送付されたらしい。WSJ(ウォール・ストリート・ジャーナル紙)などが批判的なニュアンスとともに報じている様子である。
- ただ、そのニュースが報じられてのち、この上場SPAC・DWA社の株価は2日間で10倍に跳ね上がった(10/20, 10ドル → 10/22, 109ドル)。
私の見解は、次のとおりである。
- SPAC上場スキームに力を入れている投資銀行群と、なんだかよくわからないがとにかく儲かりそうだからと、SPACの株主となる投資家たち、という構図が見える。
- 空箱上場、裏口上場、上場審査回避目的と、悪い噂の絶えないのがSPACという存在であり、投資家保護の仕組みを整えてきているとはいえ、そういうネガティブな側面のあることはやはり否定できないのである。
- ひとことでいって、カネ余り時代のあだ花といえる。バブルの発生に付随して現れる事象という以外にない。
- バブルの存在を示唆する事象といえる。バブルのエネルギーは充満している。
- また、大衆から金を巻き上げる手法にも見える。
- 米国では1980年代にSPAC絡みの不祥事が相次いだことが問題視された。
- SPAC上場は、けっこう前から行われていて、当時から問題視されてもいた。
- 現在、日本ではSPAC上場が認められていないが、東証は、前向きな検討を続けているようでもある。認めないのが健全な姿といえよう。
<結論として>
- SPACへの投資、やりたいという人を止める筋合いはないのだが、もしも、自分の親から、SPAC投資を考えているのがどうだろう?などと相談されたとしたら、絶対、手を出してはなりませぬというだろう。