楽しい投資研究所のブログ [New]

楽しい投資研究所 1toushi.com の公式Blogです。

伯楽の話 ~ 伯楽の故事に学ぶ投資の着眼点 ~

韓非子に伯楽の記事がある。春秋戦国時代の古代中国・秦の穆公に仕えた人物である。馬の目利き、育成にきわめて優れた人物であったと伝えられる。伯楽とは通称であり、姓は孫、名は陽といった。現代でも優れた人材を見出し育て上手な人物を名伯楽と呼んだりする。

・当時、伯楽に教えを請いに来る者も大勢いたようだ。伯楽は、はるばるやってきた者を邪険に追い返すようなまねはせず、何らかの教えを授けた。人付き合いの上手でもあったようだ。しかし扱いには差をつけた。

・伯楽に気に入られなかった者には名馬の見分け方が教えられた。一方、伯楽に気に入られた者には駄馬の見分け方が授けられた。気に入られたら駄馬なのだ。なぜなのか?

・名馬はめったにいないが、駄馬はいくらでもいる。実生活で馬を扱い商う上で、役立つ知識とは名馬の見分け方ではなく、駄馬のそれであったためだという。

・これは投資においても参考になる考え方ではなかろうか。ふつう、投資したいと考えるのは優れた良い会社であろう。馬にたとえれば名馬である。
私自身、名馬をずっと探しているわけだが、めったに出会えるものではない。幸運にも出会えたところで、たいてい高すぎる。高すぎる買い物が良い投資となることはほとんどない。

・理想的な会社ならすぐイメージできる。どんどん売上を伸ばして高い利益率を保ち、借金なく財務体質も優れ、聖人君子のような経営者が率いていて、それでいて安く買える会社が良い。さあそういう会社を持ってこいといわれても、いわれた方は困ってしまうだけだろう。そんな会社はまずない。名馬はめったにいないのだから。

・一方、駄馬ならどこにでもいる。いってみれば駄馬だらけである。ふと興味をそそられた会社があって調べてみても、四季報の該当ページを眺めただけで、それ以上突っ込んで調べたいと思える会社はほとんどない。さらに有報を手に入れて読み込んでみようと思わせる会社は、一〇社に一社あれば良い方である。

・しかしここが大事なところなのだ。見極めるべきは、投資すべき会社以前に投資すべきでない会社の方である。

・世間は駄馬だらけなのだ。ここでは買うべきでない馬を見分ける目利き力がものをいう。誰が見てもうまくいきそうな会社を見出そうとするのでなく、失敗する可能性の高い会社を見分け、それを避ける。
避けて、避けて、駄馬の群れをかき分けて探し続けるうちに、きらりと光る会社に出会う。世間ではどうやら駄馬とみなされているが、名馬となる可能性が感じられる馬に出会う。これが投資家にとっての運命の瞬間である。

・今回取り上げた伯楽の話は、「韓非子」に収録された故事である。伯楽の背中が語る教えは私たち投資家にとっても示唆に富んだものとなるはずだ。


韓非子(中国の思想I) http://amzn.to/2gT8YSj

 

 

甥っ子への公開書簡

(老後の経済問題を消す方法)

  • お金のことは早めに考えておいた方が良い。時間さえかければ大抵の問題は解決できるものだから。
  • だから投資のことは早めに考えておいた方が良い。そして投資を始めるのは早ければ早いほど良い。
  • お年玉の一〇分の一、お小遣いの一〇分の一を投資へまわすことを、おじさんは強くすすめます。
  • 投資先は自分の頭で考えて決めなさい。さきのことは誰にもわからないし、誰ひとり君の人生を背負い続けてはくれないのだ。
  • 何に投資すればよいのか分からないときは、株価指数連動タイプのETFにしておくのが良いでしょう。
  • 掛け算を習ったら、その日のうちに複利の計算を覚えること。数学者になるのでない限り、実生活で一番役に立つのがこれだから。
  • その日の夜に、五〇年複利計算シートをつくってみること。出てくる数字(金額)に驚くはずだ。エクセルは便利だよ。
  • ちなみに過去百年間の株式市場全体の複利利回りは年率8%程度と覚えておけば良い。これはインフレ調整後の値である。
  • ここまでやったら君の老後の経済問題はあらかた消滅したはずだ。よかったね。

 

四半期決算の存在意義について

  • 四半期決算の存在意義とは何だろう。
  • 日本の四半期決算の歴史は短い。法制化という意味では2008年4月1日以降開始事業年度から上場会社には四半期報告書の提出が義務付けられた。それまでは本決算と中間決算の年二回で済んだ。
  • 四半期決算は欧米のスタイルを直輸入したものでもある。
  • 投資家保護に資する、という大義名分のもとの導入でもあったが、そもそも投資家たちは四半期決算を望んでいるのか。
  • 長期投資を基本とするのであれば、年次決算くらいは興味深く眺めるだろうけれど、四半期決算をいちいち気にはすまい。四半期ごとにわあわあ騒ぐようでは長期間投資し続けることなどできたものではない。業績や財政状態の開示は年一回で十分である。
  • しかし現実には、3か月ごとの決算でわあわあ騒ぐ人々も大勢いる。短期売買を基本姿勢とする市場参加者たちだ(メディア関係者もそうだ)。
  • 彼らを悪くいうつもりはない。株式の短期売買はリスクが高すぎるのでお勧めできたものではないのだが、短期売買を繰り返す人々がいるからこそ市場の流動性は高まる。いつでも好きな時に株式を売ったり買ったりできるのは、市場の流動性を高めてくれる人々がいてくれるからだ。
  • そして彼らは長期投資家と同じく、証券市場に資金を供給してくれる大切な存在でもある。
  • 射幸心をあおり、短期売買を好む人々をも市場取引に参加させるシステム、いいかえれば、ギャンブル好きな人々の嗜好を満足させつつ(結果を満足させるとは限らないが)、彼らのお金をも吸収して事業投資に振り向けさせるのも株式市場の一面である。
  • 四半期という短期間で企業情報を開示させることで、短期売買を旨とする人々を刺激する。彼らは短期的な思惑に基づいてでも売買を行う。買って売る、売って買う。ならして考えれば、キャッシュは市場の中を漂い続ける。売買が増えれば結果的に市場にとどまる資金量は増加する。市場を介して資金を調達したい人々にとってはありがたい限りである。
  • 投資家保護という建前は便利だが、実際のところはちがうというのもよくある話なのだ。四半期決算は投資家のためのものとは限らない。
  • そういう意味では、四半期決算なぞその程度のものなのだという認識を持つのは悪いことではない。

四半期決算の存在意義と東芝の信用について

  • 東芝の経営者は四半期決算を舐めた。
  • 第3四半期レビューで結論の不表明とされていながら、他の監査法人に監査をさせて、年度決算で適正意見を得られればそれでいいと。そんな姿勢で監査人の交代をほのめかした。
  • 四半期決算は簡易決算であるからそれほど重要ではない、という論調が日経新聞にも見られた。おかしなというか阿呆な話である。
  • PwCあらたに代わって準大手の監査法人が監査人を引き受けるのではとも取り沙汰されていたが、受ける監査法人があるのだとしたら見てみたいと思っていた。あえて火中の栗を拾う監査法人である。しかし結局、そんな法人はなかった様子。
  • 東芝とあらたとの間にどんなやり取りがあったのか、想像することしかできないが、もっと歩み寄れなかったのかと残念に思う。東芝の経営陣、監査法人のパートナー陣との間に感情的な対立が生じてしまったのだろうか。
  • オピニオン ショッピングをするには、東芝は巨大過ぎるのだ。この点、監査法人と対立するのは東芝にとって得策ではなかった。
  • それはともかく、四半期決算など取るに足らぬものであって、四半期レビューの結論などなくても構わないのだ、という主張は新しいなと思った。これがまかり通れば四半期決算の存在意義が失われる。

投資実験レポート その9 - 投資のタイミングについて

  • 投資はタイミングがすべてである。
  • 短期売買の話ではなく、長期投資においても同じことがいえる。タイミングがすべてだ。
  • 優れた会社であっても、その価値に比して高すぎる価格で買えば失敗する(高い運用利回りは得られない)。
  • ある会社に惚れ込んだ人がいた。これは良い会社だ、この会社の株主になりたい、と強く思った。その会社の価値を試算してみた。そしてその時の株価と比較してみた。高過ぎはしないものの、明らかに安いというほどではない。しかし僕の好みの会社だ、実際、この会社の製品も使い続けている。良い製品だし、絶対、良い会社のはずだ。僕の投資方針はあくまでも長期である。優れた会社への投資は、長期的に報われて然るべきだ。「安くはない」程度で、この機会を逃してなるものか。
  • 要するにこれは12年前の私のことなのだが、損失にはなっていないものの、満足のいく運用利回りは得られていない。むしろ低過ぎる。報われていない。惚れ込んだらそれは失敗の兆候である(自戒)。
  • 一方、試算した価値に比べてどう考えても安い、安過ぎる、そう思える会社もたまにではあるが現れる。
  • 市場は効率的である、そんなことはそうそうあるものではない、そう思っていた時期が私にもあったが、案外、こういうことは珍しくないようだ。頻繁にあるとはいえないが、良い会社が見つかったらターゲット プライスを書き留めておいて、会社の動向と株価の推移を観察し続けることは、けっこう報われることの多い投資行動と思われる。
  • 「待つ」ことは、極めて重要な投資行動のひとつである(一番重要な投資行動とはこれかもしれない)。
  • 世界的な信用収縮期は絶望感に覆われていたが、今にして思えば投資を行うに最良の時だった。
  • 本当に「株式の死」というタイトルの記事が現れもした。大恐慌のときにも同様のタイトルで書かれた記事があったそうだ。歴史はくり返すのだ(次にまた「株式の死」という記事が現れたら買い時の可能性が高い)。「資本主義は死んだ」とも声高に叫ばれていた。では今、私たちはどんな社会に生きているのだろう。
  • ところで、絶望に覆われた状況の中で果敢に動くのは、口でいうほど簡単ではなかった。準備がいるのだ。資金もそうだが、それ以上に投資候補先の理解が重要事である。
  • 準備が整っていなければ、動くべき時に動けないのだ。恐怖に縛られてしまう。恐怖は無知から生まれる。
  • 最良のタイミングを掴める者とは、必要な準備を終えていた者だけなのだと知ることができた。これが絶望期の中で得られた最大の果実である。
  • 最近、どう考えても安い、と思われた会社(の株式)を4社ほど買い求めたのだが、さいわいにして含み益の状態となっている。もちろん、今後どうなるかはわからないのだが、保有継続の方針ではある。良い会社であり続けてくれることが最大の望みだ。

(投資期間7年未満の投資先すべて)

f:id:shojig:20170112135117p:plain

  • ところで、売り時についても興味深いテーマではあるのだが、私自身研究途上であるので、今回は買い時についてのみ記した。

投資実験レポート その8 - 高いリターンをもたらしてくれた会社の共通項

  • 高い運用利回りを与えてくれた投資先はどんな会社なのか。
  • 7年以上投資している13社のうち、複利利回り12%以上は3社が該当する(下記のとおり)。

f:id:shojig:20170112123644p:plain

※7年未満投資先4社の内、12%以上の複利利回りを上げている会社は2社(小数点以下四捨五入すれば3社)あるが、こちらは安い時期にうまく買えた可能性が高いので除外する。

  • それぞれまったく異なる事業を手掛けているが、共通項を挙げるとするならば、次のとおりである。

 

  1. 他社には容易に真似することのできない品質を持つ。
  2. 専門とする分野で、高い付加価値を与えている
  3. 結果として(特定の分野で)高いシェアを保持している。

 

  • それと、これを書いていてふと思ったのだが、上記いずれの会社も、経営者がぐいぐい前に出てくるタイプではない。

 

投資を通じて感じたことは、

  1. 高い価値は人から生み出されている。
  2. モノ(不動産のような)ではない。
  3. 高い価値は高度な専門知識すなわち高度な人材から生み出されている。

ということである。

  • あと、共通項というわけではないが、世界トップを狙えるもののみ取り扱う、世界一になれそうもないプロジェクトは捨てる、という風に、経営者が明確に世界一の立ち位置を志向している、方針を明確にしている会社が一社入っていて、印象的であった。
  • ところで、上記のうち2社は、私自身が日常生活の中で助けられた(非常に助けられた)モノやサービスを提供してくれた会社だった。
  • 製品・サービスが良いものだということは体で理解していたし、良い会社だとは思っていたが、投資を始めた時点では、この水準のリターンを長期的にもたらしてくれるとは、正直、期待していなかった。
  • 高度な専門知識を持った人々が、会社にとっての最大の資産なのだろうと感じられた。高い競争力を長期にわたって保持し続けられる会社を探す際には、これが重要なヒントになるはずだと思う。
  • あと意外だったのは、メディアへの露出が多く、カリスマ的な(あるいはカリスマ的に見えるよう演出された)経営者が率いる会社への投資は、成果としてみれば普通であったかむしろ悪かった。経営トップが業界団体のトップに立っている(立っていた)ような会社も悪い。そういう経営者は、注意すべき対象が分散し、経営者としての意識が散漫になってしまっているのかもしれない。
  • カリスマチックな経営者が率いる会社への投資は慎重であるべきと今は考えている。

投資実験レポート その7 - 適用する会計基準と運用利回り

  • 日本の証券市場は複数の会計基準を認めている。
  • どの会計基準を用いるかで、会社の価値に影響を与えるはずがない、と考えるのは正しいのだろうか。
  • 実験ファンドが投資する会社について、適用している会計基準という切り口で少々、考えてみた(※2016年度末時点の状況は下表のとおりである)。

f:id:shojig:20170111191229p:plain

  • 高い運用利回りをもたらしてくれた会社(複利利回り8%以上の会社)はすべて、日本基準を適用している会社であった。

会計基準に日本基準を適用している実験ファンドの投資先)

f:id:shojig:20170112131216p:plain

  • 実験ファンドが保有する銘柄のうち、IFRS国際財務報告基準)を適用している会社は2社あるが、これら2社は、運用利回りワースト4にランクインしている。

IFRSを適用している投資先)

f:id:shojig:20170112131336p:plain

  • IFRSを適用する会社のうち一社は、当初は日本基準だったのだが投資後7年目にIFRSの適用を始めた。買収を重ねて「のれん」の残高が膨らんだ後に行われたIFRS適用であった。その意図はのれんの定期償却負担の回避であろうと推測できた。明らかにネガティブなサインである。
  • 経営者の誠実性が感じられない行為であった。こういうときは、たとえ将来性が見込めるビジネスを持っていたとしても、ある程度、投資のウェイトを縮小すべきである。サインを感じ取ったそのとき、即座にそうすべきであったのだ(これができていないことが反省点である)。
  • 昨今、新たにIFRSの適用を表明する会社は十中八九、多額ののれんを抱えているように思われる。
  • IFRS会計基準として未熟である。それどころか、基準の改正にコメントを求めておきながら、多数意見をあっさり無視した改正案を通したり(IFRS9)、コメントを求めることなく時価評価の一部凍結をバックデートで認めたり(2008年10月)と、IFRSファウンデーションは奔放である。彼らの親の顔が見たい。
  • そういう経緯があるものだから、IFRS!ははぁ国際財務報告基準ですか!すばらしい!とか思うわけもなく、逆に、眉に唾つけてじっくり見極めねばという気持ちになってしまう。狸かもしれない(実際、狸が多い)。
  • これからIFRSを適用します、というような会社が視野に入ったときは、まずのれんをチェックするようにしている。そしてたいてい巨額ののれん残高が見つかる。
  • IFRS適用企業に対する懸念あるいは不信感を、多くの市場参加者が持っているものと考えて間違いないだろう。
  • ついでながら、7年以上投資継続先13社のうち、US基準適用会社は4社である。これらの運用利回りは年率5%前後といったところである(ぱっとしない)。

(米国(US)基準を適用している投資先)

f:id:shojig:20170112131417p:plain