投資実験レポート その6 - 失敗した投資。せめて教訓の果実を
- 投資して後、ROEが低落している会社は、期待していた成果が得られていない。将来性を見誤った私が悪いのである。
(運用利回りがマイナスの投資先2案件)
- これらの会社、投資したその時点では立派な数字を示していたのだ。ROEもかなり高い水準にあった。
- ところがその後、暗転したのである。米住宅バブルの崩壊、リーマン破綻、世界的信用収縮、中国からの安価な鉄鋼製品の流出といった事柄が相次いで、極端に落ち込み、いまだ回復できずにいる。
- 思い返してみれば、その際、多少の焦りがあった。今、投資しておかなくては乗り遅れるという気持ちがあった。自分もバブルに踊っていたわけだ。恥ずかしい。
- 見込みのある会社と考えているからこそ投資は継続しているわけだが、ここまで水底を這いずり回ることになろうとは、投資した当初は予想だにしていなかった。
- 最悪の展開は想定しておかねばならないのだ。どんな物事も、予想通りに行くことの方がまれである。つまり予想外の出来事は必ず起こる。
- 考え得る最悪の流れが生じても、それでも生き残ることができるようにと考えて、投資の意思決定を行わねばならないということだ。良い教訓を得られた。これが、これらのひどい投資案件から得られた最大の果実である。
- なお、ROEワーストの2社は、運用利回りの面でもワースト2を構成している(ROE平均値はプラスなのだが、運用利回りはいずれもマイナスに落ち込んでいる)。
- 事業の善し悪し、経営者の器、手腕の巧拙は、ROEやFCF、自己資本比率といった経営指標に、端的に現れるのではないかと考える。
- これらワースト投資先の経営者は、立派なことを言い、書きもする御仁である。外見も大人といった風格を漂わせている。この人物ならば、と投資資金を振り向けたわけだが、こういう結果となってしまっている。つまり問題は、立派なことをいうかどうかではなく、結果を出せる人物かどうかである。まるで関係のない事柄を結びつけるような過ちを犯してはならない(自戒)。
投資実験レポート その5 - ROEよりもROAに注目すべきこと
(投資期間7年以上、(運用による)複利利回り上位5社についての表)
- 複利利回り上位5社中、4社は自己資本比率75%以上であった。
- そして、自己資本比率上位4社が、複利利回りベスト5にランクインしている。
- ちなみに、ROA(総資産利益率)=ROE×自己資本比率 の関係にある。複利利回りとROAとの関係はどうなのか?
- 複利利回り上位5社中、4社のROA(直近10期平均値)が 6.6%以上であった。
- そして、ROA上位4社が、複利利回りベスト5にランクインしている。
- 高い運用利回りを求めるのなら、ROEよりも、ROAに注目すべきといえそうだ。
- いいかえれば、ROEと同時に、自己資本比率にも注意を払わなければならないということだ(当然といえば当然なのだが)。
- さらにいえば、ROE以上に、自己資本比率の高さが、運用成果(複利利回り)に大きな影響を与えているようにも見える。
熟読すべからざるもの
(情報との付き合い方について)
- 新聞を熟読してはいけない。時間の方が価値高い。
- 今何が起こっているのか、その事実のみを把握すればよい。見出しだけで十分。意見、社説は不要。休むに似たり。
- 新聞をまともに読めば三時間かかる。一日の1/8の時間(=命)を代償として差し出すことになる。そんな価値は新聞にはない。
- 週刊誌も基本的に同じこと。新聞よりは吟味された内容の記事が載っているが、それも熟読するほどのことではない。事実の把握、素材を頭に入れておけばよい。
- ネット上の記事は99.9%が害毒。見ないが最善。
投資実験レポート その4 - 投資先のROEとリターンの関係
ROEと運用実績(複利利回り)とは相関関係にあるのか
※7年以上投資し続けている全13銘柄(下表)の場合
- 実験ファンドの投資先の自己資本利益率(ROE)実績値(直近10年間の平均値)と、それぞれの運用実績(複利利回り)とを並べてみた。高い運用利回りをもたらしてくれた会社は、例外なくROEの水準が高い。
- 通常、ROEの高い会社に注目して投資しているわけだが、投資した後、ROEが低落することも珍しい話ではない。高いROEを実現し続けたという実績は高く評価されて当然だろう。
- 一方、ROEがそこそこ高い水準にあるのに、運用成果が伴っていない銘柄も少なからずある。原因として考えられるのは・・・原因①:株価が高い時期に買ってしまった(取得時期を見誤った)。原因②:会社への悪評などがあり、市場評価が低い。原因③:投資支出が多く、FCFを残せていない。
- ROEが高いことを以て有望銘柄と結論付けるのは拙速である。多面的に企業を評価することが必須である。
- この会社は良い会社・優れた会社だという評判を、しばしば耳にするような会社(※当てにはならないのだが)は、市場評価も高く、ROE実績を上回る運用利回りをもたらしてくれたように見える。
投資実験レポート その3 - 実験ファンドの取引全履歴
- 投資実験のため、私的ファンドを15年間運用し続けて来た。これまでに行った取引はシンプルなものであった。
- サマリー情報となるが、すべての投資行動と結果をここに記しておく。実験ファンドが行った取引の内容は次のとおり。
(a) 2016年12月末時点で保有を継続しているもの
*1: 投資開始日より当年度末までの年数。
*2: 含み益+受取配当(配当は税引き後)の取得原価に対する割合。
*3: 概算値。投資実行日より起算。
(b) すでに売却したもの
- 以上ですべてある。
投資実験レポート その2 - 継続投資とリターンの関係
(継続投資とリターンの関係についての考察)
投資期間7年以上の場合:
- 実験ファンドにおいて、7年以上投資し続けている会社は13社ある。
- このうち累積リターン(値上り益+配当。配当は税引き後)が+100%を超えているのは5社(38%)。うち2社(15%)が+360%超である。
- 累積リターンが+90%超という基準で数えれば7社(54%)と半数以上を占める(下表)。
<累積リターン率が+90%超のものを抽出した表>
投資期間10年以上で見てみれば:
- 実験ファンドにおいて10年以上投資し続けている会社は7社。
- このうち累積リターンが+100%を超えているのは3社(43%)。うち2社が+360%超。
- +90%超という基準で数えれば4社(57%)とやはり半数以上を占める。なお、損失となっている投資先はゼロである。
2016年度 投資実験結果の暫定報告 その1
- 決算書を読み込んで投資先を選別、長期投資に徹したらどうなるか?市場全体を長期的に上回る投資成果が得られるのではないか?そんな仮説の検証のために始めた投資実験、早いもので丸15年が経過した。実際にやってみないとわからないことが目白押しの15年であった。
- 相変わらず、個人資産の大半を突っ込み体を張っての実験である。
- これまでの実績をグラフにまとめるとこうである(基準価額は次のように推移した)。
- 当年度の具体的な数値は下記の通り。基準価額は過去最高値をマークした。
- ベンチマークとしているのはTOPIXと日経平均である。TOPIX連動型および日経平均連動型の投資信託に投資した場合と比較している。
- 2016年度の運用成績は +12.86%。日経平均の+1.94%、TOPIXの△0.05%をいずれも10ポイント以上、上回る結果となった。
*2015年度は実験レポートを発行しなかったため、参考情報として前年度の数値を併記。
- 実験ファンドと日経平均連動型、TOPIX連動型投資信託がそれぞれ上げた成果を、複利利回り(年率)で表現してみると、次のようになる。
- 名目値は単純に計算したもの。実質値はインフレ率を調整したものである。なお、インフレ率には消費者物価指数(総合)を用いた。USドル換算値は、インフレ調整後の実質値をヒストリカル・レートでドル換算して求めた値である。
- 名目値で測った複利利回り(年率)は実験ファンドが +6.87%、日経平均が+5.43%、TOPIXが+3.98%となった。
- 消費者物価指数は15年前に比べて2.2%上昇している。複利で考えれば年率0.14%のペースでのインフレ進行である。
- ほんの数%の利回りの差が結果に大きな差をつくるのだ。ちょっとこわいくらいである。複利がもたらす結果は人の直感を上回る。
- 2016年度はTOPIXにも日経平均にも、二ケタの差をつけて終えることができた。そこそこ良い結果が出せたと思う。
- 重点投資先の市場価格の上昇が大きかった。