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投資実験レポート その8 - 高いリターンをもたらしてくれた会社の共通項

  • 高い運用利回りを与えてくれた投資先はどんな会社なのか。
  • 7年以上投資している13社のうち、複利利回り12%以上は3社が該当する(下記のとおり)。

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※7年未満投資先4社の内、12%以上の複利利回りを上げている会社は2社(小数点以下四捨五入すれば3社)あるが、こちらは安い時期にうまく買えた可能性が高いので除外する。

  • それぞれまったく異なる事業を手掛けているが、共通項を挙げるとするならば、次のとおりである。

 

  1. 他社には容易に真似することのできない品質を持つ。
  2. 専門とする分野で、高い付加価値を与えている
  3. 結果として(特定の分野で)高いシェアを保持している。

 

  • それと、これを書いていてふと思ったのだが、上記いずれの会社も、経営者がぐいぐい前に出てくるタイプではない。

 

投資を通じて感じたことは、

  1. 高い価値は人から生み出されている。
  2. モノ(不動産のような)ではない。
  3. 高い価値は高度な専門知識すなわち高度な人材から生み出されている。

ということである。

  • あと、共通項というわけではないが、世界トップを狙えるもののみ取り扱う、世界一になれそうもないプロジェクトは捨てる、という風に、経営者が明確に世界一の立ち位置を志向している、方針を明確にしている会社が一社入っていて、印象的であった。
  • ところで、上記のうち2社は、私自身が日常生活の中で助けられた(非常に助けられた)モノやサービスを提供してくれた会社だった。
  • 製品・サービスが良いものだということは体で理解していたし、良い会社だとは思っていたが、投資を始めた時点では、この水準のリターンを長期的にもたらしてくれるとは、正直、期待していなかった。
  • 高度な専門知識を持った人々が、会社にとっての最大の資産なのだろうと感じられた。高い競争力を長期にわたって保持し続けられる会社を探す際には、これが重要なヒントになるはずだと思う。
  • あと意外だったのは、メディアへの露出が多く、カリスマ的な(あるいはカリスマ的に見えるよう演出された)経営者が率いる会社への投資は、成果としてみれば普通であったかむしろ悪かった。経営トップが業界団体のトップに立っている(立っていた)ような会社も悪い。そういう経営者は、注意すべき対象が分散し、経営者としての意識が散漫になってしまっているのかもしれない。
  • カリスマチックな経営者が率いる会社への投資は慎重であるべきと今は考えている。

投資実験レポート その7 - 適用する会計基準と運用利回り

  • 日本の証券市場は複数の会計基準を認めている。
  • どの会計基準を用いるかで、会社の価値に影響を与えるはずがない、と考えるのは正しいのだろうか。
  • 実験ファンドが投資する会社について、適用している会計基準という切り口で少々、考えてみた(※2016年度末時点の状況は下表のとおりである)。

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  • 高い運用利回りをもたらしてくれた会社(複利利回り8%以上の会社)はすべて、日本基準を適用している会社であった。

会計基準に日本基準を適用している実験ファンドの投資先)

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  • 実験ファンドが保有する銘柄のうち、IFRS国際財務報告基準)を適用している会社は2社あるが、これら2社は、運用利回りワースト4にランクインしている。

IFRSを適用している投資先)

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  • IFRSを適用する会社のうち一社は、当初は日本基準だったのだが投資後7年目にIFRSの適用を始めた。買収を重ねて「のれん」の残高が膨らんだ後に行われたIFRS適用であった。その意図はのれんの定期償却負担の回避であろうと推測できた。明らかにネガティブなサインである。
  • 経営者の誠実性が感じられない行為であった。こういうときは、たとえ将来性が見込めるビジネスを持っていたとしても、ある程度、投資のウェイトを縮小すべきである。サインを感じ取ったそのとき、即座にそうすべきであったのだ(これができていないことが反省点である)。
  • 昨今、新たにIFRSの適用を表明する会社は十中八九、多額ののれんを抱えているように思われる。
  • IFRS会計基準として未熟である。それどころか、基準の改正にコメントを求めておきながら、多数意見をあっさり無視した改正案を通したり(IFRS9)、コメントを求めることなく時価評価の一部凍結をバックデートで認めたり(2008年10月)と、IFRSファウンデーションは奔放である。彼らの親の顔が見たい。
  • そういう経緯があるものだから、IFRS!ははぁ国際財務報告基準ですか!すばらしい!とか思うわけもなく、逆に、眉に唾つけてじっくり見極めねばという気持ちになってしまう。狸かもしれない(実際、狸が多い)。
  • これからIFRSを適用します、というような会社が視野に入ったときは、まずのれんをチェックするようにしている。そしてたいてい巨額ののれん残高が見つかる。
  • IFRS適用企業に対する懸念あるいは不信感を、多くの市場参加者が持っているものと考えて間違いないだろう。
  • ついでながら、7年以上投資継続先13社のうち、US基準適用会社は4社である。これらの運用利回りは年率5%前後といったところである(ぱっとしない)。

(米国(US)基準を適用している投資先)

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投資実験レポート その6 - 失敗した投資。せめて教訓の果実を

  • 投資して後、ROEが低落している会社は、期待していた成果が得られていない。将来性を見誤った私が悪いのである。

(運用利回りがマイナスの投資先2案件)

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  • これらの会社、投資したその時点では立派な数字を示していたのだ。ROEもかなり高い水準にあった。
  • ところがその後、暗転したのである。米住宅バブルの崩壊、リーマン破綻、世界的信用収縮、中国からの安価な鉄鋼製品の流出といった事柄が相次いで、極端に落ち込み、いまだ回復できずにいる。
  • 思い返してみれば、その際、多少の焦りがあった。今、投資しておかなくては乗り遅れるという気持ちがあった。自分もバブルに踊っていたわけだ。恥ずかしい。
  • 見込みのある会社と考えているからこそ投資は継続しているわけだが、ここまで水底を這いずり回ることになろうとは、投資した当初は予想だにしていなかった。
  • 最悪の展開は想定しておかねばならないのだ。どんな物事も、予想通りに行くことの方がまれである。つまり予想外の出来事は必ず起こる。
  • 考え得る最悪の流れが生じても、それでも生き残ることができるようにと考えて、投資の意思決定を行わねばならないということだ。良い教訓を得られた。これが、これらのひどい投資案件から得られた最大の果実である。
  • なお、ROEワーストの2社は、運用利回りの面でもワースト2を構成している(ROE平均値はプラスなのだが、運用利回りはいずれもマイナスに落ち込んでいる)。
  • 事業の善し悪し、経営者の器、手腕の巧拙は、ROEやFCF、自己資本比率といった経営指標に、端的に現れるのではないかと考える。
  • これらワースト投資先の経営者は、立派なことを言い、書きもする御仁である。外見も大人といった風格を漂わせている。この人物ならば、と投資資金を振り向けたわけだが、こういう結果となってしまっている。つまり問題は、立派なことをいうかどうかではなく、結果を出せる人物かどうかである。まるで関係のない事柄を結びつけるような過ちを犯してはならない(自戒)。

投資実験レポート その5 - ROEよりもROAに注目すべきこと

(投資期間7年以上、(運用による)複利利回り上位5社についての表)

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  • 複利利回り上位5社中、4社は自己資本比率75%以上であった。
  • そして、自己資本比率上位4社が、複利利回りベスト5にランクインしている。
  • ちなみに、ROA総資産利益率)=ROE×自己資本比率 の関係にある。複利利回りとROAとの関係はどうなのか?
  • 複利利回り上位5社中、4社のROA(直近10期平均値)が 6.6%以上であった。
  • そして、ROA上位4社が、複利利回りベスト5にランクインしている。
  • 高い運用利回りを求めるのなら、ROEよりも、ROAに注目すべきといえそうだ。
  • いいかえれば、ROEと同時に、自己資本比率にも注意を払わなければならないということだ(当然といえば当然なのだが)。
  • さらにいえば、ROE以上に、自己資本比率の高さが、運用成果(複利利回り)に大きな影響を与えているようにも見える。

熟読すべからざるもの

(情報との付き合い方について)

  • 新聞を熟読してはいけない。時間の方が価値高い。
  • 今何が起こっているのか、その事実のみを把握すればよい。見出しだけで十分。意見、社説は不要。休むに似たり。
  • 新聞をまともに読めば三時間かかる。一日の1/8の時間(=命)を代償として差し出すことになる。そんな価値は新聞にはない。
  • 週刊誌も基本的に同じこと。新聞よりは吟味された内容の記事が載っているが、それも熟読するほどのことではない。事実の把握、素材を頭に入れておけばよい。
  • ネット上の記事は99.9%が害毒。見ないが最善。

投資実験レポート その4 - 投資先のROEとリターンの関係

ROEと運用実績(複利利回り)とは相関関係にあるのか

※7年以上投資し続けている全13銘柄(下表)の場合

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  • 実験ファンドの投資先の自己資本利益率ROE)実績値(直近10年間の平均値)と、それぞれの運用実績(複利利回り)とを並べてみた。高い運用利回りをもたらしてくれた会社は、例外なくROEの水準が高い。
  • 通常、ROEの高い会社に注目して投資しているわけだが、投資した後、ROEが低落することも珍しい話ではない。高いROEを実現し続けたという実績は高く評価されて当然だろう。
  • 一方、ROEがそこそこ高い水準にあるのに、運用成果が伴っていない銘柄も少なからずある。原因として考えられるのは・・・原因①:株価が高い時期に買ってしまった(取得時期を見誤った)。原因②:会社への悪評などがあり、市場評価が低い。原因③:投資支出が多く、FCFを残せていない。
  • ROEが高いことを以て有望銘柄と結論付けるのは拙速である。多面的に企業を評価することが必須である。
  • この会社は良い会社・優れた会社だという評判を、しばしば耳にするような会社(※当てにはならないのだが)は、市場評価も高く、ROE実績を上回る運用利回りをもたらしてくれたように見える。

投資実験レポート その3 - 実験ファンドの取引全履歴

  • 投資実験のため、私的ファンドを15年間運用し続けて来た。これまでに行った取引はシンプルなものであった。
  • サマリー情報となるが、すべての投資行動と結果をここに記しておく。実験ファンドが行った取引の内容は次のとおり。

(a) 2016年12月末時点で保有を継続しているもの

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*1: 投資開始日より当年度末までの年数。
*2: 含み益+受取配当(配当は税引き後)の取得原価に対する割合。
*3: 概算値。投資実行日より起算。

(b) すでに売却したもの

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  • 以上ですべてある。