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最も大切にしてきた情報源について(投資実験報告2019 その5)

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投資先を決める際に最も重視してきたのは有価証券報告書だ。

会社の過去の実績を見る。これを評価の基礎に置く。

決算書に現れるのは過去の数値ゆえ将来予測の役に立たないという見解もあるがそれは浅い。過去から現在までの情報は全て株価に織り込まれているので無意味と見る人もいるが、実際にそうであったとすれば実験ファンドが市場平均に勝てることもなかった。

過去を正しく理解して初めて将来予測の精度を上げられる。過去を一切無視して将来をはかるなどギャンブルでしかない。

注目してきた情報について①:自己資本利益率自己資本比率

実験ファンドの投資先を決める際に注目してきたことを記す。

有報を手に入れたらまず冒頭の主要な経営指標等の推移を見た。

<事例:マニー株式会社。2007年8月期の有報から。注目し始めた頃のもの>

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まず気になるのは自己資本利益率である。高ければ高いほど良い。資本をどれだけ上手に扱えているかが示される。

併せて自己資本比率にも注目する。これも高ければ高いほど良い。低すぎると逆境に弱い。

レバレッジを効かせているので自己資本利益率は高いが自己資本比率は低いという会社も多い。そういう会社への投資は慎重になる。

自己資本利益率が高くとも、自己資本比率の低い会社はなかなか市場の信頼を得られないようにも見えた。なかなか株価が上がらない。

市場は案外慎重であるように感じられた。財政状態が脆弱な会社は逆境に見舞われると容易に倒れてしまう。そのリスクを感じた資本はすぐに逃げる。お金は臆病なのだ。

投資家が注意を払うべきものとそうすべきでないものについて

昔のバークシャー ハサウェイ社の株主総会を映した動画がYoutubeにあった。

株主のひとりが質問に立って、今後10年間の経済見通しについて教えて欲しいという。するとバフェット氏は、

その質問は重要だが不可知 (unknowable) だ。私たちはそういうものに注意を払わない。我々は重要 (important) で、かつ知り得る (knowable) ものにのみ注意を払う

というふうに答えていた。

むかし、あなたの信じる宗教は?と問われたバフェット氏が、

「私は不可知論者です」

と答えたという話があって、それはどういう意味なのかと思い続けて来たが、そういうことだったのかと腑に落ちるような良い動画であった。

この動画である

 

 

9倍株の見つけ方(投資実験報告2019 その4)

 ■9倍株も生まれた

テン バガーには至っていないのだが9倍株についても触れておきたい。累積リターンが+800%超の会社である。もう少しで10倍株だと考えてしまいがちだが株価の動きは予測がつかない。捕らぬ狸は皮算用しない。ただ9倍株もなかなかのものだと思う。取得後10年の銘柄である。

 

■実験ファンドを牽引してくれた会社:マニー株式会社(保有期間 10年)

2019年に大きく株価を上げて実験ファンドを牽引してくれた会社の名はマニーである。

以前、日経ビジネスの記事で元気な地方企業という扱いで紹介されていた。経済誌を読む意味はこういうところにある。

高い世界シェア。栃木に本社を構える。世界一にこだわる製品開発。高い技術力。会社四季報を読んでさらに興味を惹かれ、有価証券報告書をダウンロードした。
有報を眺めてみればなるほど利益率が高い。財政状態も良い。

 

◾️2007年8月期の有価証券報告書(冒頭部分):マニー(株)

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ROE自己資本比率流動比率、資産の中身、損益計算の内容、キャッシュ・フローの状況、経営者の持株状況、セグメント情報、会計監査人と監査意見等など。

これは良い会社である可能性が高いと最後に株価を調べた。高かった。

焦って買ったところで良いことはないので、この時は注目の会社として心に留めておくことにした。買い時を待った。

数年後、株価が安くなっていることを知った。2009年の冬のことだった。2009年12月から2011年3月にかけて、何度かに分けて買った。

取得した当時の時価総額は360億円程度。いわゆる小型株である。

その後しばらくの間、目立った値動きはなかった。

急騰したのは2018年と2019年である。

 

マニーの株価チャート(※Yahoo finance)

 

■まとめ

この会社を取得しよう、保有し続けようと思わせてくれた要因を挙げれば次のとおりである。

  • 評価高くユニークな製品を供給し続けている。
  • 高い市場占有率
  • 高い技術力。
  • 高い利益率。
  • 健全な財政状態。

9倍株となった要因として重要だったと思えたのは次のとおり。

  • 小型株だったこと(時価総額の小規模な会社でなければ大幅な値上がりを期待するのは難しい)。
  • 安く買うこと。焦って買わないこと。
  • 待ち続けたこと。(※追記)

 

■付記 

ちなみに2019年末現在、株価は個人的に試算している理論値に比べて100%以上高い。市場の人気・注目度が高い状況になっているのだなと考えている。

 

■おわりに

「テンバガー(ten-bagger)」とは、ピーターリンチがその著書のなかで書いていて、いつかは自分もこういう株を所有したいものだと思っていた。気がついたらそこそこ叶っていた。時間さえかければ可能なのだ。

なお、テンバガーとは10塁打の意。野球用語なのだ。テンバーガーではない。

【提言】独自指標の決算書上の公表は厳しく規制すべきこと

独自指標と称して会計基準に準拠しない経営指標を決算書に記載する場合はすべてに【基準外】の文言を添えることを強制すべき。
有価証券報告書 <- 金融庁
決算短信 <- 証取。
基準に従った数値と基準を無視した指標を会計の素人は区別できない。悪意の経営者に個人投資家が喰い物にされている。

悪臭を放つ決算書が存在すること

ゴーン氏が主導した際どい決算、過剰な演出による劇的なV字回復決算にいかがわしさを感じた私は、日産自動車へ投資することはなかった。当時は日本全国がゴーン氏に対する称賛の嵐で、私の感覚の方がおかしいのだろうとすら思 っていた。

今にして思えば、当時の日産の「V字回復」決算に感じた違和感は 、経営者の心根の卑しさを反映したものだったと思える。こういった決算に対する皮膚感覚とでもいうべきものが私をこれまで何度か救ってくれたようにも思える。会計監査に明け暮れ疲弊した日々はどうやら無駄ではなかったようだ。

ところで今、ゴーンの決算以上にいかがわしい決算書が日本の証券市場を侵食しつつあることを書いておきたい。

私が公認会計士として会計の世界に入って20数年になるが、ここまで悪意を感じさせる決算は見たことがないという決算書を、2019年は目にする機会があった。
悪臭を放つ決算書があるとしたらこれではないかと思わせられるものだった。PDFファイルが臭うのだ。経営者の心根の卑しさを感じさせるという点では、ゴーンがかわいく見えるレベルである。

このような決算発表を行って恥じない会社経営者も存在するのだという事実を、驚きをもって受け止めた。しかし普通の投資家がこのような経営者に近づくことはお勧めしない。 それどころか絶対回避警戒警報を発したい。

会社名をここに書くことは控える。ただ、近づくべきでない会社・経営者を避けるためのキーワードを書いておく。それは「独自指標」である。会計基準を完全に無視した、経営者が自画自賛するためだけの経営指標である。これをもって己が功績と胸を張るような輩が率いる会社に関わってはならない。脱兎の如く逃げるに如かずである。

テン バガー:10倍になる株の見つけ方(投資実験報告2019 その3)

■初の10倍株

実験ファンドの保有するある銘柄の値上がり益と配当による累積リターンが+900%を超えた。10倍株と呼んでいいだろう。実験ファンド初のテン バガー(ten-bagger)の誕生である。

その会社の名は船井総研ホールディングス。

取得したのは2004年3月なので、テン バガーとなるのに15年と9ヶ月かかった。

そもそも10倍株となることを期待して買った株ではなかった。ここまで上がるとは正直、予想もしていなかった。

当時、この会社の創業者(船井幸雄氏)が良いことをいうなと感心したので、そして調べてみたら財政状態も業績も悪くなかったので買った。あと、私の最初の著作を同社の発行誌で紹介してくれたということもあった。その程度である。

さほど目立つ会社でもなかったように思う。時価総額が小規模の会社でいわゆる小型株だった。

コンサルタント集団の会社である。人が最大の資産という会社だった。

財政状態は良かった。自己資本比率は高めの水準。流動比率も問題なし。ROEはまあまあキャッシュ・フローも健全に見える。

<2003年(平成15年)12月期の有価証券報告書・主要な経営指標等の推移>

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■きっかけは自社株買い

この会社を買おうと思ったのは当時、同社が立て続けに自社株買いを行っていると新聞で読んだのがきっかけだった。まともな経営者であれば自社の株価が十分に安いと考えてのことのはずである。

<これも2003年12月期の有報から>

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取得後、大きな値動きもなく11年が経過した。じわじわ上がり始めたのは2015年頃。急騰したのは2017年以降である。待つ必要があった

最初から期待していたわけではなかったので投資額は少額であったことだけが心残りである。株価は上がったのに悔しい。

 

■株価の動き(外部リンク)

船井総研HDの株価チャート(※Yahoo finance へのリンク)

 

■おわりに(現在の株価について)

ちなみに、現在の同社の株価はかなり高い水準にあると思っている。現在の株価は個人的に試算している理論値の倍以上である。なので買い増しはできずにいる。

 

投資実験報告2019 その2:局地的バブルとテン バガー

■実験ファンドの投資先すべて:

実験ファンドが保有する銘柄を一覧にまとめた。

せっかくなので銘柄別に保有期間と利回り(年率複利)も計算してみた。次のとおりである。

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実験ファンド保有銘柄一覧(2019年末)

■売却処分:

年初までに製薬会社の株をすべて売却処分した(B社/製薬)。経営者が信用できなくなったためである。もっと早い段階で見限るべきだった。ゴーンがかわいく見えるレベルの経営者は今もいる。

■新規投資・追加投資:

新たに買った銘柄が1つ、追加投資した会社が3つ。株価が大きく下落したタイミングで買った。もっと下げるかと思ったのだが、思いのほか回復が早く小規模の追加投資にとどまった。

■テン バガー:

2019年は実験ファンド初のテン バガー(10倍株)が生まれた年となった(F社/サービス)。その株式の一部を売却した。良い会社ではあるのだが、株価が高すぎるように見えたため一部を利確とした。

■最大寄与銘柄:

9倍株(いわばナイン バガー)となった銘柄(M社/精密機器)もある。2019年はこの会社の株価が大幅に上昇し、実験ファンドに大きく寄与した。1年間で株価は2.3倍(取得原価比で見れば+528%)となった。2009年から2011年にかけて取得した銘柄なのだがここにきて急騰した。株価がいつ動くのかはまるでわからない。

■その他:

・トランプ米大統領の恫喝でFRBが利上げを見送らなかったらここまで上がることはなかっただろうと思う。

・いつ暴落するかわからないという警戒心をこの4~5年ずっと持ち続けているのだが、2019年はそのときではなかった。

・こうして見ると大幅な株価上昇が当期の好成績につながった。あり余るマネーがエネルギー源であり、ある種のバブルであることはまちがいないと思っている。ただし無節操な株バブルの時代は過ぎたようで、じゃぶじゃぶのマネーが流入先を厳しく選別しているようにも見える。局地的バブルがそこかしこに生じている状況が今なのだろうと考えている。