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バークシャー・ハサウェイの巨額損失とその真実

先般5月2日、アメリカはネブラスカ州オマハにて、バークシャー・ハサウェイ社の年次株主総会が開かれました。

今回は一般株主は召集されないかたちでの総会開催となりました。それも新型コロナウイルスいわゆる武漢ウイルスのせいです。

Yahoo finance経由でリアルタイムで観ましたが、ウォーレン・バフェット氏がひとり話す場面の長い異例の総会となりました。大勢の株主を前にして語るバフェット氏とは異なり、やや寂しげに見えたのはこのご時世でもありやむを得ないところでしょう。昨年の総会では年齢をまったく感じさせないエネルギッシュなバフェット氏の姿が、今年はややはかなげに見えて、複雑な気持ちになりました。

さて、総会と同じ日にバークシャー・ハサウェイの第1四半期決算が発表されました。その損益は▲497億ドルの純損失という凄まじい大赤字となりました。円に換算すればおよそ5兆円の損失です。これをとらえてかつては投資の神様だったが今はこの体たらくといった論調の記事をいくつか目にしました。ただし、これはバークシャー社の実態を表したものとは到底いい難いものなのです。これが今回の主題です。

バークシャー社のHPから決算書を手に入れて読んでみれば、この損益がいかにしてあらわれたものなのか、その内情が分かります。

問題の連結損益計算書を見てみれば、最終的な純損益▲497億ドルの要因は、主に「投資損失」▲702億ドルであることがわかります。

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バークシャー・ハサウェイ社の10-Qレポート(四半期報告書)から抜粋。連結損益計算書(一部)。2020年度の第1四半期。

さらに突っ込んで注記を見てみれば、資本性金融商品(Equity securities, 株式と考えて良いでしょう)の時価変動額が▲684億ドルだと見て取れます。※10-Qレポートの11ページ、投資損益の内訳("Note 6. Investment gains/losses)に記載。

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*同10-Qレポートの注記から抜粋。「投資損益の内訳」。

保有し続けている株式の時価がこの3ヶ月間でこれだけ下がったという情報です。無意味とはいいませんが、それだけのことです。はたしてそれが長期間バークシャーに投資し続けようと考えている株主にとってどんな意味があるのかという話です。

保有株式の時価変動をすべて損益に取り込むという処理は、つい最近、2018年度から始まったものです。

仮にこれを除外すれば、バークシャーの純損益は44億ドルのプラスとなります(税効果を考慮して試算)。円に換算すれば4,700億円程度の純利益です。悪くありません。以前の会計基準に従った場合はこういう結果になります。

ところで前年度(2019年)の通期決算は、最終損益が+814億ドル(8兆円強)と巨額の純利益でした。10-Kレポート、日本でいう有価証券報告書に相当する決算報告文書を眺めてみれば、そのうち+695億ドルが株式の時価変動分であることがわかります(税効果を考えれば純損益に与える影響は550億ドル程度です)。

前期の純利益もその大部分が、保有する株式の時価変動分から成っているのです。

 

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バークシャー ・ハサウェイ2019年度の10-Kレポートから抜粋。日本の有価証券報告書に当たるもの。連結損益計算書の一部。

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*同10-Kレポート注記より抜粋。「投資損益」の内訳。

つまり、純損益の金額をそのまま持ってきて、これがバークシャー・ハサウェイという企業グループの、その事業活動の結果として報告すべきものなのか?という話です。

これには疑問を覚えないわけにはいきません。実際、会長のバフェット氏も副会長のマンガー氏もこのような処理を求める会計基準を批判しています。このような業績報告を強いる会計基準には賛成することができないと株主への手紙の中で再三語ってもいます。

このルールは、前述のとおり2018年度から適用されるようになりました。保有する株式の公正価値変動分を(そのほとんどが株価変動によるものでしょう)純損益に含めるよう強制されるのです。会計基準の改正というよりも改悪といえます。

従来、このような保有株式の時価変動分は、損益計算書の枠外で決算に反映されていました。ちなみに日本の会計基準は現在も、従前の米国基準と同様に、株式の時価変動については純損益に影響を与えない処理を正しいものとして扱っています。数年前までは米国もそうだったのですが、これが今、おかしなことになっています。

こういうノイズを除外しなければ、企業の実態を理解したいと考える株主や投資家にとっては意味をなさないだろうと考えます。実際、私の場合、バークシャーへの投資を考える際には、この保有株式の時価変動による影響額をすべて除外して考え、その上で判断を下しています。

決算数値というものは一見、絶対的なものととらえられがちかもしれませんが、存外あやふやなものであり、う呑みにすれば痛い目を見る場合がままあるということです。バフェット氏の言葉を借りれば、純利益とは経営者による意見のひとつでしかなく、会社を理解するための出発点に過ぎないのだということです。この点、変わりはありません。

 

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※今回の記事はラジオ(楽しい投資Podcast)でも取り上げています。併せてお聴きいただけますと嬉しいなと思います。下のリンク先にてどうぞ!

http://1tpc.seesaa.net/article/475041673.html

 

武漢ウイルス(新型コロナウィルス)と複利の話

ラジオを公開しました。楽しい投資Podcastです。

武漢ウイルス(新型コロナウィルス)と複利の話をお届けします。

  • 日本における感染者数の増加を複利で考えてみます。
  • ウイルスによる感染症の真の恐ろしさとは、人の直感を大幅に上回るスピードで、人の生活・命を脅かす点にあります。
  • たったひとりの軽率な行動が国を傾ける結果につながりかねません。
  • 傾国の美女というのならまあ...と男として思わないでもないですが、ただの粗忽者に国を傾けられてはたまったものではありません。極刑に処せ、と思います。

こちらでお聴きいただけます。

1tpc.seesaa.net

 

どこで区切るか - もっとも重要な意思決定事項

投資期間をどのように設定するか。これが投資を考える上で決定的に重要である。

もちろん、どのように設定するかは各人の自由である。1年後に区切る人もいれば10年後に期限を設ける人もいる。期限を定めない永久投資という設定も可能であり場合によってはもっとも賢明な条件設定となる場合もある。

逆に1ヵ月間とか1週間、1日だけというような極めて短い投資期間を設ける人たちもいる。トレーダーと呼ばれる人々でありそもそもそれは投資と呼べるのかという話にもなるが。とにかく投資家個々人の自由である。

1年後に今の経済状況がどうなっているかは想像がつかない。予測が困難である。もしかしたら中国武漢コロナウイルスの惨状が沈静化されていて、経済活動も従前に近い形にまで回復しているかもしれないし、いっそう深刻化していて企業倒産が相次いで大変な状況になっている可能性もある。1年後を区切っている人にとってみればそれをどうとらえるかが問題であり、数週間、数ヶ月間という期間設定の人にとってみればおそらく現在の経済状況からの大幅な改善が見込めることはないのでいっそう状況が悪化している可能性の方が高いとも考えられる。そういう人にとってみれば今保有している株式の価格が上昇するよりも下落する可能性の方がはるかに高い、そう考えれば今もっとも合理的な意思決定は持ち株の売却処分ということになる。

10年後や20年後あるいはそれ以上の投資期間を定める投資家にとってみればどうだろう。今の中国ウイルスが20年後も猛威をふるい続けていて人類を苦しめ続けていると予測するのでなければ、今の状況とはまったく異なった世界となっている可能性の方が高い。賢明に対処できていたならば経済活動も正常な状況に戻っていることだって十分にあり得る話であるし、むしろその可能性の方が高い。歴史的に見てもそうである。ヒトは多くの困難に直面していながらそれを克服してきた。数日間で対処することはできなくとも数ヶ月間、数年間をかけて問題には上手に対処してきたのがヒトという種族である。

現在の状況を見るに、数日後や数週間後に結果を求める人にとっては、売りが合理的な判断であり10年後20年後の投資期限を定める投資家にとっては、もしかしたら今の株価は魅力的に映るかもしれない。そういう人にとってみれば、もしかしたら買いが合理的な意思決定になるかもしれない。両者の間で売買の成立する状況が生まれる。市場取引が成立するのは立ち位置の異なる投資家たち・市場参加者たちが同時に存在するからである。

米国会計基準を適用する会社のEPS(1株当たり当期純利益)情報、使用上の注意について

アメリカの yahoo! finance はさすが本家本元だけあって良くできていて、会社の主要な経営指標を一覧で把握できるようなつくりになっている。とても助かる。具体的には1株当たり当期純利益(潜在株式調整後)であるところの "Diluted EPS", 1株当たり純資産でであるところの "Book value per share" その他諸々と、とても便利である。

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※ちなみに、(ttm) とは trailing twelve months の略で過去12ヶ月間の実績に基づく数値の意であり、(mrq) とは most recent quarter の略で直近の四半期数値の意である。なお、EPS は Earnings Per Share 念のため。 

 日本のYahoo!ファイナンスにもよくお世話になっているのだけれども情報整理の洗練度合いでいえばUS版に一日の長があるといわざるを得ない。なお、Yahoo Japan にはたいへんお世話になっていてありがたく思っておりますことを申し添えておく。

さて、この記事の目的は yahoo! finance US を持ち上げることではなく、現在のアメリカにおける1株当たり当期純利益情報(EPS)には要注意という点が主題である。

というのも、数年前に米国会計基準が変わって、会社が保有している株式の時価の増減を純損益に含めるようにした結果、純損益情報が質的に変化(劣化)してしまったためだ。

※2017年12月15日以降開始の年度から適用。米国会計基準を適用している会社に影響あり。日本基準適用の会社は影響なし。 

 その結果、1株当たりの純利益情報に保有株式の時価変動が混入してしまい、それがいったいどんな意味を持っているのか?という状態になってしまった。

その発端はどうやら2008年のアメリカ住宅バブルの崩壊、リーマン破綻などから起きた世界的な信用収縮、金融危機から教訓を得たのか何なのか、会社が持っている金融商品時価変動も純利益に反映させて開示することが、会社の実態を適時適切に開示することにつながるというふうに考えたらしいのだが、実際のところはよくわからない。

うがった見方かもしれないが純利益情報の劣化を意図的に望んだ勢力がいたのではないかと勘繰ってみたくもなる。

要するにいいたいのは、便利な経営指標一覧を活用するのは良いのだけれども、それだけに依存してしまうと危険だよということである。

たとえばバークシャー・ハサウェイ社の場合、会長であるバフェット氏は会計基準の改正(改悪)によって純利益情報が使えないものになってしまったと嘆きつつ、アニュアル・レポートのなかで、保有している株式など金融商品時価増減が純損益に与えた影響額を脚注で開示してくれている。↓こんな感じである

<Berkshire Hathaway Inc. 2019 Annual report, K-31 より一部抜粋>

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※企業情報開示のお手本

気まぐれな市場価格の変動による影響額を除外することによって、バークシャー・ハサウェイという企業グループが持つリアルなビジネスが生み出した理論的価値を、ひと昔前の伝統的な純利益に近づけて把握することができる。情報を求める者は、株価の短期的な変動というノイズを除去できるというわけだ。

経営指標は、企業の本質的価値を見通すための便利な窓のようなものだと思う。ただし、その窓の本質を理解しておかないことには、ミスリードされてしまう危険性も併せ持つということを知っておくべきだろうと思い、こんなことを書いておく。

加工された情報はたしかに便利なのだが、それに依存しすぎることなく、一次情報に当たることがやはり大切なのだという話である。

 

株を言い値で買う

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株価が暴落した。今日は取引時間中、1990年以来の下げ幅も記録したとか。たしかにこの数日間は日本株も米国株も言い値で買えた。

新型コロナ(武漢肺炎)ウイルスの蔓延は困ったことなのだがちがう世界も見えた。

中国の本質を再認識できた、というか自分は何も分かっていなかったということが分かった。

中国共産党の隠蔽体質、情報遮断、自己正当化、独裁者礼賛と、その醜さ、危険性を浮き彫りにしてくれたのもコロナウイルスである。その上、開発中の生物兵器漏洩が新型コロナの発生源といううわさが根強くある。あの連中とは極力かかわるべきではない。

新型コロナのショックはリーマン破綻の衝撃を上回るという話を耳にするが、なにをもってそのようにいえるのか。そもそも問題の本質が別種であるように思えるのだが。市民生活へのネガティブな影響度という意味だろうか。それならわからないでもない。

このところの株式市場は、あふれるマネーを抱えて局地的バブルが方々で発生していた。調整はいつ起きるのか、暴落はいまかいまかと警戒し続けてきた人も多いのではないかと思う。私自身そのひとりである。

いつ暴落が起きてもおかしくない、新規や追加の投資には慎重になるべき、そう思い続けて3~4年になるだろうか。ようやく来たかという感じでもある。新型コロナウイルス蔓延はたしかに厄介な問題なのだが、トリガー事象としてとらえるべきだろうと思う。

今回の件で、中国の信用は地に墜ちたので、中国に長期的にコミットする国や企業は激減するだろう。尊敬を得られない国が覇権を握ることはできない。中国の時代は来ない。

そもそも現代の中国に期待してはならなかったのだ。今の中国とかつての中国は、まったくの別ものなのだ。中国の古典が伝えてくれる思想の深さやかぐわしさは失われて久しかった。悲しいことである。

やがて崩壊する中国について

コロナウイルス感染域の拡大は、ひどい話ではあるのだが、感染すれば即刻命を絶たれるものではないようで、そこが不幸中の幸いであったといえるかもしれない。WHOは致死率3.8%というが、中国のそれが極端に高いあたり、感染者数の過少カウントが影響しているのだろうと思う。

そこから見えてきたものもある。すなわち中国共産党が支配する中国はとても信用ならないということだ。

投資してはならないのが中国である。そしてもろい。結論からいって、現代中国の体制が長く続くとは考えられない。

若い中国人のひとたちと仕事する機会がここ数年の間にかなり増えた。皆感じの良い子たちである。素直で穏やかで慎ましやかにすら見える。

若い頃に英語を学んだ中国人は傲慢になり、日本語を学んだ中国人は謙虚になるという話を聞いたことがあるが、なるほどそういうものかもしれないと実際に思わされもした。

興味深いのは、中国で生まれ育った若い人たちが、彼らの祖国、中国を信頼していないということだ。正確には中国共産党を信用していない。

若く知的な中国人の青年に、一般的な話題として今の中国について話を振ると、自嘲気味に問題が山積なのだと言う。ある中国人女性は、実家(中国)に帰省する際には、スマホの中のデータを全て消去するのだと言う。また、日本に嫁した中国人のある女性は、頑として中国製の食品を買わないという。中国に生まれ育った人たちの言動には重いものがある。

思うに、近い将来、崩壊する運命にあるのが現代の中国なのだ。中国共産党による支配体制はやがて崩れ去る。おそらく中国共産党の統制力は弱まっていき、やがては力で押さえ込むような過激なものとなるかもしれない。国民に対して軍事力を行使する可能性もある。そして内戦状態へ陥っていくこともあり得る。結局、その行き着く先は現体制の崩壊である。共産党による独裁体制は崩れ去って新しい統治の仕組みが導入されることになる。

これはもしかすると私が生きている内に起こり得ることなのではないかとも思う。信用を失った統治者、我々にとって害になると判断された統治者は、民衆の支持を失い、統制力あるいは強制力のあるうちはよいがそれが衰えれば、その座を追われる。

その前兆として経済的に豊かな人々が中国から逃げてゆくだろう。政権中枢からも人は離れていくだろう。その結果、共産党の支持基盤はいっそうもろいものとなり、やがて崩れてゆく。

崩壊の過程が過激なものとなるか穏やかなものとなるかはわからないが、行き着く先は予測が難しいものではない。この点、投資に似ている。

コロナウイルスが露わにした中国の本質

新型コロナウイルスの感染拡大は専制独裁体制の危うさを明らかにした。大国であるほど周辺国への影響が大きい。

不測の事態に対しての対応の遅れが顕著である。情報伝達の効率性が損なわれている。独裁者個人の実務能力にも限界がある。

共産党の支配する中国は信用を大いに損なった。今後、中国が覇権を握ることはないだろう。

専制体制とは平時には強さを見せるが非常時には脆さを露呈する。専制独裁体制は本質的に脆く、長命は望めないのだ。

21世紀は中国の時代とジム・ロジャーズは語ったがそれは誤りだった。